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2005年05月11日

麗子像を考えよ:かえるさんより vol.01.

旧くからのわたしのお友達のかえるさんからのメールを紹介します。

>ブログがんばってますね。反響はいかがですか?
>とりあえず取り上げていただきたいネタをリクエストしまっす!
>「麗子像」って絵のシリーズあるじゃないですか。はっきり言って、怖い絵だと思うのですが、どこが名画なのでしょうか?
>「そのリアリズムが人間としてのなんたらこうたら〜」ってのは考え付くけど、としはるさんの見方だとどうなるのか読んでみたい。

と、言う事なので、がんばってみましょう。

本題に入る前に確認しましょう。このメールにあるのは、岸田劉生さんの絵画作品『麗子像』シリーズですね。
なんと異なる作品が発売時期を違えて、過去二回も切手になっているという連作です。まぁ、この辺は、精緻な油絵による肖像画だから郵政省(当時。現日本郵政公社)的には、技術的にも腕の見せ所であると同時に、ニセ切手対策的な意味合いもあるのでしょう。だって、一枚は「切手趣味週間」の、もう一枚は「近代美術シリーズ」の、いずれも記念切手だから、その使用を主たる目的としているのではなくて、コレクター向けの発売であるって事ですよね?
余談ですけれども、安達哲のマンガ『バカ姉弟』で主人公の姉が麗子の一発芸のモノマネをやっています。
まぁ、それくらい(ってどれくらい?)、世間一般的な認知度がある有名な作品である、と。

ものづくし(click in the world!) 7.-1.:

麗子像 そのいち

「麗子像」シリーズは油絵だけでも20数点あるらしいので、その20数点を並べるだけでも、「ものづくし」になっちゃうんだけれども、それではさすがにアレがアレするので、数点のみを並べてみます。「麗子像」ってなぁに?って方のためのあくまでも参考ですので、以下の作品が「麗子像」シリーズの中で、代表作であるとか傑作であるという意味では、必ずしもありません。とりあへずの4作品です。

麗子像
麗子肖像(麗子五歳之像)
毛糸肩掛せる麗子像
麗子十六歳之像

南伸坊の『モンガイカンの美術館』に、岸田劉生に関する章があって、そこで、次の様な件がある。
岸田劉生展に出かけた著者は手帖を取り出して、今回展示されている作品の中からその題材を書き出して、その数を調べてみる。つまり、本人の自画像や岸田さんの奥さんの肖像画や麗子さんの肖像画や村娘(あるいは村嬢)さんの肖像画の数を調べて行くのだ。ちなみにごていねいにも、紙面にもその一部が掲載されていて、自画像が16作品、しかも1913年だけで7作品も並んでいるのは、ちょっと壮観。
その結果、著者は”岸田劉生の不思議さは単純にコンキの問題かもしれない”といういかにも南伸坊的な結論を導き出すのではあるが。

例えば、画家が自画像を描くというのは、どういう意味があるのだろうか?自画像と言えば、レンブラントとかゴッホとかがまぁ相場で、それぞれの画家の劇的な人生を象徴するものとして、もしくは彼らの内面を深く照射する作品として、数多くの美術論や作品論や作家論が書かれている訳だけれども、ここでは当然、そんな事はしません。
次の様にばっさり切り捨てる。
一番手近にあって、モデル料がかからなかったからでしょ?

 ちゃんとした自画像に関する文章でなおかつ解りやすいものとして、森村泰昌の『美術の解剖学講議』(ちくま学芸文庫)にある「セルフポートレイト論」をお薦めしておきす。著者自身が自画像をテーマ(しかもちょっとヘンな)にした作家なので、創り手の視点からみたものとなっています。
ちなみにその「セルフポートレイト論」では、”全世界で描かれた絵画の99.999パーセントは、風景画であったり他人の肖像画であったり抽象画であったり、ともかくセルフポ−トレイトではない”とあります。

岸田劉生自身も本人やその家族や友人の肖像画をえんえんと描いている訳だから、経済的な理由がない訳ではないだろうって、言い切っちゃてもいいのかな?言い切っちゃてもいいけれども、ここで終わっちゃ怒られるだろうな。少なくとも、さきの森村泰昌の文章を読む限り、全世界で描かれた絵画の0.001パーセントの画題である肖像画にこだわった画家、なのだから。
先ずは、「麗子像」シリーズを生み出した張本人は、ずいぶん変わった人なんだなという事を押さえて今回は終了。

なので、この項、続きます。

<次回予告>
麗子像 そのに
麗子像 そのさん
麗子像 そのよん

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