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2005年10月24日

『カフェ・ブリュ』 by ザ・スタイル・カウンシル(CAFÈ BLEU by THE STYLE COUNCIL)


とっちらかったアルバム。
オリジナル・アルバム発表時の1984年にもそう思ったけれども今、あらためて久しぶりに聴き直しても、その感は拭えない。
但し、発表当時はその印象は決してプラスの評価ではなかったが、現在ではとっちらかっているが上に面白えというのが僕個人の感想となっている。
それは、この20年間の間で音楽の聴かれ方がかなり様変わりしたからではないだろうか?

例えば、新宿タワーレコードに行くと、僕は全フロアを駆けずり回る。J-POPはちらっと横目でみるくらいだけれども、ロックブラックミュージックジャズワールドミュージックサントラ現代音楽と、その日その日によって、重点チェック・ジャンルは変わるけれども、とりあへずは各フロアは、全て観て廻る。
所謂クラシックは相変わらず敷居は高く、C & WはどこかのSF映画の火星人の様にやっぱり苦手ではあるんだけれども。
そんな音楽の聴き方をする様になったきっかけを作ったのは、80年代初頭のポスト・パンクニューウェイヴ擡頭期。パンク・ムーヴメントによって、音楽というものがその初源的な破壊衝動によって一回リセットされたその次のタイミング。硬直的だった音楽のジャンルの壁が取り払われ、ありとあらゆる音楽が等価なものとなり、貪欲なアーティストによって様々な音楽ジャンルが個々の鋭い感性によって、大胆にも導入されてからである。
そして、それはクラブミュージックという過去の音楽の再編集/再構築というアプローチと、CDという新しい音楽メディアの登場のよって現在と過去の音楽が等価なものとして店頭に並ぶという現象によって、さらに加速されて行く訳だが。

その先駆者的な役割を果たしたのが、ザ・スタイル・カウンシルTHE STYLE COUNCIL)であり、このファースト・アルバムである。
バンドという硬直的なシステムから逃れ、ポール・ウェラーPAUL WELLER)とミック・タルボットMICK TALBOT)を中心に各楽曲毎にミュージシャンを補充し、必要とあらば外部のシンガーもフィーチャーする。
その手法は、スティーリー・ダンSTEELY DAN)という偉大なる異端児たる先駆者はいたものの、この”バンド”の登場はやはり画期的な事件だったのだ。その後、スティーリー・ダンSTEELY DAN)的な手法やその演奏形態に影響された後続集団は数多く登場するけれども、それはまた別の話。
この『カフェ・ブリュ(CAFE´ BLEU)』という作品にあるのは、ジャズボサノバシャンソンラップといったありとあらゆるジャンルの音楽であって、表層的には、それをひとつの作家性のあるアーティストの作品とは、言い難い。本作品を統合するある種のモードやある種のキブン、ある種の雰囲気で、判断されがちである(例:スタカンっておっシャレぇ?)。
もしくは、この”バンド”の中心人物ポール・ウェラーPAUL WELLER)のかつてのキャリアや彼が放つ社会的なメッセージを、その音楽性を評価する縁(=よすが)とする解釈しかない。前者では、全英ナンバーワンヒットを連発して、人気のピークに達していたバンド、ザ・ジャムTHE JAM)を音楽的なイキヅマリを理由にあっさり解散させた男として、後者では反サッチャー政権を標榜し、労働党支持を打ち出して、ポリティカルなイベントにも率先して出演する”バンド”として硬派音楽ジャーナリズムに支持されるという具合(例:「ホワイトハウスへ襲撃(DROPPING BOMBS ON THE WHITEHOUSE」という楽曲の強い政治的メッセージ!)。
その異なる二面性は、どちらも真の姿であるが故に、両者の評価は常に交わる事はなかったと思う。だからこそ、本作品以降、音楽性はよりタイトで統合されたものとなり、正式メンバーや準メンバーも固定化して、”バンド”的相貌を強く打ち出して行った。

ちなみに僕はと言うと、本作品収録のエブリシング・バット・ザ・ガールEVERYTHING BUT THE GIRL)のトレイシー・ソーンTRACEY THORN)歌う「ザ・パリス・マッチ(THE PARIS MATCH)」を聴きながら、先にシングルとして発表されたポール・ウェラーPAUL WELLER)が歌うヴァージョンより、はるかにいいなって思っていました。ポール・ウェラーPAUL WELLER)・ヴァージョンは『スピーク・ライク・ア・チャイルド(SPEAK LIKE A CHILD)』で聴けます)。勿論、その後数年してまさかトレイシー・ソーンTRACEY THORN)御本人とお会いするとは、当時予想だに出来なかったすよ。

PS:当時、ブルーを基調としたモノトーンのジャケットと、画面右のポール・ウェラーPAUL WELLER)と同じく左のミック・タルボットMICK TALBOT)の6対4の比率のカッコよさに誰もが憧れたもので、一度はこのジャケットと同じファッションに挑戦しようとした者は、数しれず。そして、ものの見事に玉砕したものも同じく数知れず。
細みのジーンズの裾をちいさく捲りあげ、白のソックスローファーを履き、インナーにスプライトのワイシャツ、その上に直接ベージュ系のステンカラーコートをラフに着こなす。
ジャケットを観るとすっごくお洒落に見えるのに、どんなに頑張っても、サラリーマンの休日の疲れたお父さんにしかならないんですよ、これが(涙)。

ものづくし(click in the world!) 16.:

カフェ・ブリュ  CAFè BLEU

by ザ・スタイル・カウンシル THE STYLE COUNCIL

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Side 1
1.ミックス・ブレッシングインストゥルメンタル
 MICK'S BLESSING
2.ザ・ホール・ポイント・オブ・ノー・リターン
 THE WHOLE POINT OF NO RETURN
3.ミー・シップ・ケイム・インインストゥルメンタル
 ME SHIP CAME IN!
4.ブルー・カフェインストゥルメンタル
 BLUE CAFÈ
5.ザ・パリス・マッチ
 THE PARIS MATCH
6.マイ・エヴァ・チェンジング・ムーズ
 MY EVER CHANGING MOODS
7.ホワイトハウスへ爆撃
インストゥルメンタル
 DROPPING BOMBS ON THE WHITEHOUSE

Side 2
1.ゴスペル
 A GOSPEL
2.ストレングス・オブ・ユア・ネイチャー
 STRENGTH OF YOUR NATURE
3.ユー・ア−・ザ・ベスト・シング
 YOU'RE THE BEST THING
4.ヒアズ・ワン・ザット・ガット・アウェイ
 HERE'S ONE THAT GOT AWAY
5.ヘッドスタート・フォー・ハッピネス
 HEADSTART FOR HAPPINESS
6.カウンシル・ミーティン(インストゥルメンタル)
 COUNCIL MEETIN'

A GOSPEL(WELLER)
All other instruments : Paul
Hon.Councillors
Rap : Dizzy Hite
Drum Programming : Pete Wilson
Trumpet : Barbara Snow
Saxphone : Hilary Seabrook

STRENGTH OF YOUR NATURE(WELLER)
Vocals,Synth Bass,Guitars,Synths : Paul
Vocals,Hammond Organ,Brass Synth : Mick
Hon.Councillors
Drum Programming : Peter Wilson
Vocals : D.C.Lee(courtesy of CBS Records)

DROPPING BOMBS ON THE WHITEHOUSE(WELLER-TALBOT)
Piano : Mick
Bass : Paul
Hon.Councillors
Saxphone : Billy Chapman(courtesy of Animal Nightlife)
Trumpet : Barbara Snow

ME SHIP CAME IN!(WELLER)
Bass & Guitar : Paul
Piano : Mick
Hon.Councillors
Saxphone : Billy Chapman(courtesy of Animal Nightlife)
Trumpet : Barbara Snow

YOU'RE THE BEST THING(WELLER)
Vocals,Guitars & Synth : Paul
Vocals,Brass Synth. & Additional Keyboards : Mick
Hon.Councillors
Drum Programming : Pete Wilson

BLUE CAFÈ(WELLER)
Guitars:Paul
Hon.Councillors
Double Bass & String arrangement : Peter Wilson

MICK'S BLESSINGS(TALBOT)
Piano : Mick

THE PARIS MATCH(WELLER)
Piano : Mick
Hon.Councillors
Guitar : Ben Watt(courtesy of Cherry Red Records)
Lead Vocal : Tracey Thorn(courtesy of Cherry Red Records)
Double Bass : Chris Bostock(courtesy of RCA Records & JoBoxers)

MY EVER CHANGING MOODS(WELLER)
Paul & Mick

HERE'S ONE THAT GOT AWAY(WELLER)
Vocals & Guitar : Paul
Hammond Organ : Mick
Hon.Councillors
Violin : Bobby Valentino
Bass : Chris Bostock(courtesy of RCA Records & JoBoxers)

COUNCIL MEETIN'(WELLER-TALBOT)
Hammond Organ & Clavinet : Mick
Bass & Flute Sound : Paul

HEADSTART FOR HAPPINESS(WELLER)
Vocals & Guitars : Paul
Vocals,Piano & Brass Sound : Mick
Hon.Councillors
Vocals:D.C.Lee(courtesy of CBS Records)
Saxphone : Hilary Seabrook
Trumpet : Barbara Snow

Photography:Peter Anderson
Design:Simon Halfon and Paul Weller
Produced by Peter Wilson and Paul Weller(for Solid Bond Productions Ltd)

LIner-Notes:"You,and Your Genius"(EXPERTS FROM THE MIND OF THE CAPPUCCINO KID) &
Jean Paul Marat(18th Century French visionary)

僕が持っている日本盤LPでは、解説を増井修氏(ロッキング・オン当時)、対訳をKuni Takeuchi氏が行っています。

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