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2007年03月09日

「Where the Hell is Matt?」そして「ある日・・・」


Ohmynews』の日本版『"市民みんなが記者だ" オーマイニュース』の記事「 YouTube 『Dancing』の不思議な力」でも紹介されていた「Where the Hell is Matt?」を観て、想い出したのは藤子・F・不二夫の短編「ある日・・・」(『パラレル同窓会』収録)だった。

町内の8mmマニア4人が行った4人だけの上映会。各々の映像作品を持ち寄って、寸評しあうという微笑ましくもあるちいさなささやかな集い。
これが町内にある小学校の体育館だったら、自己満足の極みとそれにつきあわされる家族や町内の人々の退屈さを描いてしまうし、逆に同好の志が10名もいたら、マニア特有の、お互いの傷を舐めあいながらも、その傷に塩を摺りこむ様な陰惨な描写になっただろう。だから、この4人というこじんまりさは、この短編の緊張感が各々の持ち寄った作品の出来栄えだけに集中して物語らせる事になる。
その4人の中のひとりが持ち寄った作品が、短パンにタンクトップにシューズという観るからにわたしジョギングしてます姿に身をやつした監督兼主演の男性が、家族に送り出されて自宅から走り出し、そして、その彼が東アジア、中近東、ヨーロッパ、アフリカそしてアメリカと五大陸をひたすらジョギングして世界一周、再び家族の待つ町内に辿り着く、というもの。
なぁんだ、『Where the Hell is Matt?』と同工異曲で、マット・ハーディングMatt Harding)のその作品よりも遥か昔に、藤子・F・不二夫が描いてたんだ、凄いだろ的な事を書きたいのねと想うのは、まだ、早いからね!?
Where the Hell is Matt?』を観ていて、アイデアの秀逸さとそれを実際に実行してしまう阿呆らしさに感心する以上に(ん? もしかしたらアイデアの阿呆らしさとそれを実行する秀逸さかしら?)、何故かひたすらもの哀しい想いが湧き出てくるのは何故だろう。

勿論、この映像作品にフィーチャリングされたディープ・フォレストDeep Forest)の「甘い子守唄(Sweet Lullaby)」(1994年発表のアルバム『WORLD MIX』収録 )が導き出すある種の感慨の影響は大きいだろう。そして、マット・ハーディングMatt Harding)のへっぽこでリズム感0な愛すべきダンスがもたらす特異なムードもあるだろう。否、むしろ、彼の背景として映り込む様々なもの(自然の美だったり、過去の文明の遺物だったり、現在のヒトビトの営みだったり)が多くのモノを物語っているかもしれない。
でも、それ以上に、ボクにとっては、藤子・F・不二夫が短編「ある日・・・」で描いたモノと、それを描いてしまった藤子・F・不二夫の残酷さに想いを馳せてしまうのだ。

藤子・F・不二夫が描いたモノ、そいつは平凡で退屈な日常を、すぱっと、最初からそんなものが存在しなかったかの様に終らせるモノです。
palaleludousoukai.gifdeepforestworldmix.jpg

posted =oyo= : 23:59 | comment (2) | trackBack (0) | たいの日記 /ニュースをみる

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コメント

>yosi さん

コメントありがとうございます。

わたしも「どことなくなんとなく」は読みました。
毎朝、目覚めた際に感じる一抹の不安の様なモノを、あの様な形で作品化されると、読者としては喉元に匕首を突き立てられた様なもんです。

このシリーズの副題である「異色短編」の"異色"と名付けられた際たるものですよね?
この世界観が『ドラえもん』や『キテレツ大百科』と同じ人物の頭の中にある事が、単純に驚きです。

たいとしはるさん始めまして今晩は、
OhmyNews の記事を書いた者です。藤子・F・不二夫さんの稀代の才能というものをいまさらながら感じますね。
>最初からそんなものが存在しなかったかの様に終らせるモノです。
このテーマで直接書いた作品があります。タイトルは「どことなくなんとなく」です。
(異色短編集4ノスタル爺中の31ページ作品ー小学館)これは怖い作品です。
彼のすごかったのは、普通あの当時の漫画家は小説や映画の下敷きがある作品が多かったんですが、
彼は短編でもオリジナルを貫いたということですね。

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