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2005年12月16日

『プレゼンス』 by レッド・ツェッペリン(PRESENCE by LED ZEPPELIN) II


主役の不在(=absence)もしくは非在(=non-resident)によって、物語が如実に語られるというのはよくある構造です。しかも、その物語全体を牽引する大きな力を発揮するのが、その不在/非在(=absence/non-resident)たる主役であるというのも、また、多くの物語の構造をなしています。
また、それは必ずしも物語=フィクションの中だけの話ではなくて、わたしたちの実生活にも多々観られる現象です。
深夜、東京都心の上空を滑空してみれば、その中心を大きな闇が支配しているとかね?

だから、このアルバム・ジャケットが、画面中央にぽつねんとそこにあるその存在(=presence)によって、家族団欒の光景に一種異様な緊張を醸し出しているというのは、特別の操作や技術ではない、という事を押さえておいて下さい。

ものづくし(click in the world!)  19. -II:

ヒプノシスの観た「プレゼンス」

(アートワーク・オブ・ヒプノシスでのジャケット制作スタッフクレジットより)

THE WORK OF HIPGNOSIS 'WALK AWAY RENE'
アートワーク・オブ・ヒプノシス
ヒプノシス &ジョージ・ハーディ(GEORGE HARDIE) 編著
奥田佑士 訳
宝島社

レッド・ツェッペリン
プレゼンスPRESENCE
1976
スワンソング・レコード
ダブルジャケット
ハッセルブラッド 500C + 50mmレンズ
エクタクローム
フラッシュ撮影
背景はアールズ・コートボート・ショウ
ダイトランスファーによるヌキ合わせ
レタッチ:リチャード(RICHARD MANNING
写真:ポー(オーブレー・パウエル:AUBREY POWELL)、ピーター(PETER CRISTPHERSON
物体のデザインとグラフィック:ジョージ(GEORGE HARDIE
ジャケット・デザイン:ヒプノシス、ジョージ・ハーディ(GEORGE HARDIE

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連載『プレゼンス』 by レッド・ツェッペリン(PRESENCE by LED ZEPPELIN)
第1回:I
第2回:II(本稿)
第3回:III


そのアルバムはオープニングを飾るアグレッシブな大作「アキレス最期の戦いAchilles Last Stand )」からラストのスローブルースナンバー「一人でお茶をTea For One)」まで、まるで鍛え抜かれたアスリートの肉体の様に、一片の装飾や無駄な贅肉のない、研ぎすまされた”音”としてそこに"ある"(=Presence)。
それまでのバンドの多様な試みが、結晶化しているようだ。唯一の例外は、『レッド・ツェッペリンIIILED ZEPPELIN III)』に代表されるブリティッシュ・トラッドに根ざしたアコースティック・ナンバーの不在(=absence)だが、そこまで要求するのは無茶というものだ。
特に素晴らしいのは”音圧”と”音色”。ハードでかつメタリックなサウンドを指向するアーティストにとって、決して小さくない指標となったのではないだろうか?(この辺はサウンド・エンジニア等の音のプロの意見も聴きたいところです)

しかし、逆の見方をすれば、あまりに純化された結果、一点の破綻も綻びもないというところが不満であるという、バンドの初期からの支持者からのやや屈折した視点もある事は、否定できない。枠に収まりきれないスケール感が、バンドの魅力という訳だ。アルバムでは『レッド・ツェッペリンLED ZEPPELIN)』や『レッド・ツェッペリンIILED ZEPPELIN II)』のいくつかの収録曲に観られた音楽フォーマットの破天荒な踏み外しや、ライブでの膨大なエネルギーの発散(3時間〜4時間を全力疾走するパワー)を期待する向きから見れば、こじんまりとした印象を与えられているかもしれない。粗野が洗練に収斂した結果、野性的な魅力が喪失されたということである。
後者の見解に関しては、次作がライブアルバム『永遠の詩 (狂熱のライヴ)The Song Remains the Same)』という形で、バンド自らが解答しているけれども?
問題は、3年間の沈黙を経た後に発表された作品『イン・スルー・ジ・アウト・ドアIn Through the Out Door)』との大きな差異なのだ。

レッド・ツェッペリンLED ZEPPELIN)がバンド存続時に発表したスタジオ作品は、全部で8作品。これをトランプのカードの様に、時系列にあわせて並べてみる。
初期の4作品『レッド・ツェッペリンLED ZEPPELIN)』から『レッド・ツェッペリンIVLED ZEPPELIN (Untitled) 通称:フォー・シンボルズ)』までは、奇麗な起承転結をなぞっている。
形式的にはヤードバーズ(YARD BIRDS)を引き継ぐ形でスタートしながら、実は当初の予想をとんでもなく裏切る形で登場した第一作『レッド・ツェッペリンLED ZEPPELIN)』(1969年1月発表)とその評価と支持をきちんと受け止めた『レッド・ツェッペリンIILED ZEPPELIN II)』(1969年10月発表)。その2作品が起承を担うとすれば、ハードロック・バンド=レッド・ツェッペリンLED ZEPPELIN)というパブリックイメージを裏切って、アルバム大半をアコースティック・ナンバーで構成した『レッド・ツェッペリンIIILED ZEPPELIN III)』(1970年10月発表)が転となる。そして、その3作品の冒険をきれいにまとめ、バンドの存在意義を結論づけたのが『レッド・ツェッペリンIVLED ZEPPELIN (Untitled) 通称:フォー・シンボルズ)』(1971年11月発表)。バンドの代表曲「天国の階段STAIRWAY TO HEAVEN)」が収められている作品だ。
ここまでで、70年代を代表するバンドとして、申し分のない、揺るぎ様のない輝かしきキャリアを築き上げる事が出来た。
次作『聖なる館Houses of the Holy)』(1973年3月発表)と次々作『フィジカル・グラフィティPhysical Graffiti)』(1975年2月発表)で、これまでの音楽性をさらに多彩にある意味ポップで展開した作品が続く訳だが、聴き方によっては散漫な印象を与える作品群でもある(個人的には『フィジカル・グラフィティPhysical Graffiti)』のルーズなトッチラかる作風は好きですが)。
そして、過去2作品の実験的とも言えるアプローチを清算したかのごとく登場したのが『プレゼンスPresence)』(1976年3月発表)だったわけです。

プレゼンスPresence)』自体の意義や評価は本論冒頭に軽くかいたのではしょるけれども、問題は3年間の沈黙を経て発表された『イン・スルー・ジ・アウト・ドアIn Through the Out Door)』(1979年10月発表。結果的に、本作品がバンド存続時の最終作となる)。誰もが期待していたのは、『プレゼンスPresence)』を凌駕する”音圧”と”音色”だったのだが、しかし。そこで聴く事の出来るのは、『フィジカル・グラフィティPhysical Graffiti)』の延長線上に位置できる様な作風だった。そう、まるで『プレゼンスPresence)』を大きな括弧で閉じてしまったかの様な。
(で、さらに困惑したのはバンド解散後の1982年11月発表に発表された『コーダ (最終楽章)Coda)』が今度は『プレゼンスPresence)』よりの作風だったということ)

ここでさらに次回につづきます。


ものづくし(click in the world!)  20.-II:

プレゼンス PRESENCE

by レッド・ツェッペリン LED ZEPPELIN


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レッド・ツェッペリン(LED ZEPPELIN):
ジミー・ペイジ(Jimmy Page)

ロバート・プラント(Robert Plant)

ジョン・ポール・ジョーンズ(John Paul Jones)

ジョン・ボーナム(John Bonham)


1.アキレス最後の戦い
 ACHILLES LAST STAND
 (Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)

2.フォー・ユア・ライフ
 FOR YOUR LIFE
 (Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)

3.ロイアル・オルレアン
 ROYAL ORLEANS
 (John Bonham,John Paul Jones,Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)
 Released as the B-side of "Candy Store Rock"(Swan Song 70110) on 6/18/76.

4.俺の罪
 NOBODY'S FAULT BUT MINE
 (Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)

5.キャンディ・ストア・ロック
 CANDY STORE ROCK
 (Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)
 Released as a single(Swan Song 70110) on 6/18/76.

6.何処へ
 HOTS ON FOR NOWHERE
 (Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)

7.一人でお茶を
 TEA FOR ONE
 (Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)

PRODUCED BY JIMMY PAGE
EXECTIVE PRODUCER:PETER GRANT
ENGINNERED AND MIXED BY KEITH HARWOOD.
TAPE ENGINEER:JEREMY GEE
SLEEVE BY HIPHNOSIS AND HARDIE
RECORDED AND MIXED IN NOVEMBER/DECEMBER 1975
AT MUSICLAND STUDIOS,MUNICH,GERMANY.
ORIGINALLY RELEASED AS SWAN SONG 8416 ON MARCH 31,1976.
DIGITALLY REMASTERED FROM THE ORIGINAL MASTER TAPES BY
JIMMY PAGE AND GEORGE MARINO AT STERLING SOUND.

SWAN SONG INC.DISTRIBUTED BY ATLANTIC RECORDING CORPORATION 75 ROCKEFELLER PLAZA,NEW YORK,NEW YORK 10019.
A Time Warner Company
(P) (C) 1976 ATLANTIC RECORDING CORPORATION
"The Object"(C) 1976 SWAN SONG Inc.
All Rights Reserved.Printed in Japan.

上記クレジットは、日本版紙ジャケットCDによるものです。
そのライナーノーツは、76年のLP発売当時の渋谷陽一の解説に加え、Hammill:Masahiro Shiga氏の解説、及び大屋尚子氏とMarie Nishimori氏の歌詞対訳が掲載されています。

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